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東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科

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血液透析について blood

       

血液透析とは

腎臓は、体の中の老廃物を排泄し水・電解質のバランスをとるという機能があります。血液透析はこのような腎不全による症状を改善するための治療です。血液透析は、開発されてから既に50年以上が経過し、腎不全の治療では最も広く行われている治療です。

ただし、透析は腎臓の治療ではなく、腎臓の失われた機能を補助する治療です。腎臓の機能を完全に肩代わりすることはできないため、食事・1日に飲める水分の量など生活上の制限があります。尿毒症状、心不全症状がある場合には、通常数回の治療で症状が軽くなってきます。ただし、慢性腎不全で血液透析を始めた場合、治療が完全に安定して行えるようになるには、数ヶ月かかることもあります。

a)治療の内容

血液透析は血液を体外に出して、透析器(ダイアライザー)できれいにして、体内に戻す方法です。血液透析を十分に行なうには1分間に約200mlの血液が必要です。

このため、①局所麻酔の手術で、専用の血管を作るか、②カテーテルを一時的に挿入するかして、何らかの血液の取り出し口(バスキュラーアクセスと呼びます)が必要になります。

血液透析ではこうしたバスキュラーアクセスから、十分な血液を血液ポンプで体の外に取り出し、血液が固まらないように抗凝固剤を投与してダイアライザーに通し、きれいになった血液を空気が入らないようにして、体内に戻します。

血液透析の時間と回数については状況によって異なりますが、慢性腎不全の場合には一般に週3回、1回あたり4時間の透析療法を行います。

ただし慢性腎不全の初期や、急性腎不全の場合にはこれより短時間あるいは頻回に透析を行うこともあります。

b)治療の流れ

1)体重測定

体重の変化から、体内に余分に貯まっている水分量を推定し、血液透析により取り除く水分(除水)量を検討します。

2) 血圧測定

安全に血液透析を行うためには血圧が安定していることが必要です。透析開始前にまず血圧測定を行います。

3)血液透析開始、透析中

バスキュラーアクセスの内シャントがある腕に注射針を2本(血液を体の外へ出すためのものと体に戻すためのもの)刺してから開始し(*)、予定した時間のあいだ治療を行います。

この間、基本的には横になった状態を取っていただきますが、バスキュラーアクセスがある側の腕を動かさなければ、テレビを見たり、本を読んだりしていただくことも可能です。透析中の体の状態を把握するため、定期的(30分毎など)な血圧測定や心電図モニタなどを行います。

4)透析終了・返血、体重測定

予定された透析時間が終了すると、体の外に出ている血液を体内に戻します。このとき、必要に応じ薬剤などの注射を血液回路から行います。

内シャントに留置した針を抜き(*)、止血が確認できたら、再度体重測定を行い、血液透析で余分な水が除去できたか確認して終了となります。
(*)バスキュラーアクセスの種類により異なります。

c)同時に行われる検査・治療手技

維持透析患者では定期的に血液検査を行い、腎臓の機能や貧血・電解質の濃度を測定しますが、回路から採血しますので、採血時の痛みはありません。また、血液透析によって、余分な水をどの程度除去するかの目安として、胸部レントゲン写真をとることがあります。

血液透析の合併症としては、a) 血液透析中にみられるもの、b) 血液透析終了後にみられるもの、c) 腎不全自体によってみられるものがあります。

 

◎頻度の多いもの(10%以上)
  1. ・血圧の変化
  2. ・不整脈
  3. ・同じ体勢をとることによる 体の痛み
  4. ・かゆみ・便秘

 

○比較的まれなもの(数%程度)
  1. ・発熱
  2. ・低酸素血症
  3. ・穿刺トラブル,疼痛
  4. ・カテーテルの閉塞・感染
  5. ・輸血を必要とする貧血
  6. ・不均衡症候群*

 

△ごくまれなもの(1%未満)
  1. ・バスキュラーアクセス閉塞
  2. ・出血
  3. ・体内への空気の混入
  4. ・カテーテルの閉塞・感染
  5. ・輸血を必要とする貧血
  6. ・血液を介した感染症*

*不均衡症候群:特に新たに血液透析を始めて数回の間、透析後に頭痛・嘔気などがみられることがあります。透析導入期には十分な予防策を講じながら治療を進めていきます。
このうち、血圧低下、不整脈は、比較的頻度が高いため、血圧を30分ごとに測ったり、透析中心電図モニタを行ったりして、適切な対応をとれるようにしています。

重篤な副作用

血液透析との関係性は必ずしも明らかではありませんが、年間1件未満の発症率で、通常の治療に反応しない血圧の低下や重症の不整脈、呼吸状態の変化、痙攣・意識消失、脳硬塞、心筋梗塞、肺梗塞などの重篤な合併症がみられることがあります。

また、薬剤などによる事前予測困難な重度のアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が起こることもあります。いずれの場合にも、速やかに血液透析を終了して、それぞれの状態に応じて適切な治療を行います。