経皮的バスキュラーアクセス拡張術 (VAIVT)

バスキュラーアクセスとは?

2015年12月現在、末期腎不全患者は32万人となり、そのうち95%以上の方が血液透析をされています。血液透析は血液を体外に出して、透析器できれいにして、体内に戻す方法です。血液透析を十分に行なうには1分間あたり約200mlと比較的多くの血液が必要で、一般的な採血に用いるような血管では、まかなうことができません。
そのため、透析を十分に安定して行うために、体から血液を抜き出し戻すための出入り口が必要となりますが、それを“バスキュラーアクセス”と呼びます。バスキュラーアクセスには複数の種類がありますが、日本では自己血管内シャント(略して“シャント”と呼ばれることが多い)が90%程度と大部分を占め、その他の人工血管を用いたグラフト内シャント、動脈表在化、長期留置カテーテルは10%程度です。
血液透析をこれから受ける患者さんや現在血液透析を受けている患者さんには、バスキュラーアクセスの存在が不可欠です。

バスキュラーアクセス不全とは?

バスキュラーアクセスとなる血管が狭くなったり(狭窄)、つまったり(閉塞)などして安定して使用できない状態になることを、バスキュラーアクセス不全と呼びます。
バスキュラーアクセス不全になると、血液透析を開始する際の穿刺回数が増えたり、透析療法自体の治療効率(尿毒症物質の除去効率など)が悪くなったりなど、治療の質および患者さんの生活の質を大きく左右しますので、血液透析を受ける患者さんにとってはとても重要な問題です。
これまでは、バスキュラーアクセス不全に対する主な治療法は外科的再建術(手術でバスキュラーアクセスを作り直すこと)でしたが、近年、経皮的バスキュラーアクセス拡張術(Vascular Access Intervention Therapy;VAIVT)の有効性が確認されて以降、重要な治療選択肢となり、広く認知されるようになりました。
日本透析学会が発表したバスキュラーアクセスに関するガイドラインにおいても、VAIVTによる積極的な介入の必要性についても広く認知されるようになりました。

バスキュラーアクセス拡張術 VAIVT とは?

VAIVTとは、バスキュラーアクセスの狭くなったりつまったりした部分を血管内から風船で拡張することでバスキュラーアクセス不全を改善する手術です。
局所麻酔をした上で、バスキュラーアクセスの血管に“シース”という通常の血液透析で使用するものと同程度の太さの針を刺します。シースから狭くなっている部分にカテーテルをすすめ、風船によって異常がある部位を血管の内側から広げます。

VAIVT

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当院におけるバスキュラーアクセス不全に対する治療法

当院では、原則入院で治療をおこなっております。
個々の状況により専門チームで、緊急性や、治療方法(外科的再建術による治療が妥当であるのか、VAIVTによる治療が妥当であるか)を判断いたします。
VAIVTの場合、放射線透視下で造影剤を使用する方法と超音波ガイド下で行う方法の2種類がありますが、当院では、ほとんどのVAIVTを超音波ガイド下で行っております。
血液浄化療法部(透析室)のVAIVT専用区画で治療を行いますので、普段通りの透析用ベッドの上で治療を受けていただきます。また、手術中のケアをする看護師も血液浄化療法部の看護師であり、血液透析について熟知しておりますので、いつもの血液透析を受ける時と同じようにリラックスしていただきながら治療を受けていただくことができます。

治療の流れ

当院では、透析導入フォローアップ外来や、入院中の透析で超音波による検査を適宜行っております。その際に、バスキュラーアクセス不全がないかを評価し治療を行っております。
また、クリニックでの透析でも症状がある方は、当院へ受診していただき、治療の必要性や緊急性を判断しております。

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当院での施行件数

当院では2013年9月より、腎臓・内分泌内科で超音波ガイド下VAIVTができるようになりました。超音波ガイド下VAIVTの件数は、年間約50件程度となっており、皆様の大切なシャントを守る治療を心がけております。また、血栓などによる閉塞にも緊急対応を行っております。

 

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よくある質問

Q1. VAIVTのメリットとデメリットは何ですか?

A. 1泊から2泊程度の入院で、体に傷をつけることなく翌日から通常通りの血液透析を再開して退院することができる可能性が非常に高い治療ですが、再狭窄が起こりやすいため治療を定期的に行わなければならない可能性があります。

Q2. 合併症にはどのようなものがありますか?

A. VAIVTにおける合併症として、出血、血腫、血管損傷、再狭窄、急性閉塞、ガイドワイヤーが通らないことによる手術中止、感染症、などがあげられます。
血腫については、血液透析の際にできるようなごく軽度の皮下出血(あざ)と同程度のものや、シャント肢が腫れるような大きなものも含まれています。通常は経過を観察している間に吸収され自然に良くなります。
血管損傷は、軽度であれば、手術中に圧迫止血を行うことで問題ありませんが、稀に皮膚を切開して外科的手術により止血が必要となる(0.1%程度と報告)ことがあります。
再狭窄とは、治療を行った場所がすぐにまた狭くなってしまうことです。現在、保険診療で3か月に1回の治療が認められておりますので、もし3か月以内に再狭窄を起こしてしまい、バスキュラーアクセス不全となってしまうような場合については当院では外科的再建術を行うことを提案しております。
急性閉塞は、手術中に血栓(血の塊)ができてしまい、バスキュラーアクセスが閉塞してしまうことです。様々機序が考えられますが、血栓を予防するために手術に際して、ヘパリン(抗凝固剤)を使用するなど予防措置をとらせていただいております。
ガイドワイヤーが通らないことが稀にあります。原因は高度の狭窄や石灰化などの構造物および血管走行が著しく蛇行している場合が主です。いくつかの方法などを試みることでほとんどの場合はガイドワイヤーは通過しますが、通過困難であり、合併症のリスクが増加することが予想される場合には手術を中止し、外科的再建術を検討させていただくこととなります。
感染症が合併することがあり得ます。清潔操作など厳重に行っておりますが、術後に感染を起こした場合には抗生物質による治療などを行うこともあります。

Q3. 痛いですか?

A. 穿刺の際には、局所麻酔を使用しますので、ほとんど痛みは感じません。もし感じるようでしたら、その場でお伝えいただけますと、適宜麻酔薬を追加させていただきます。しかしながら、血管が広がる痛みについては、局所麻酔が効きにくいため、少なからず痛みはありますが、拡張後にはほとんどの場合、痛みがなくなります。

Q4. 入院は必要ですか?

A. 当院では原則として、入院での治療を行っております。最短ですと1泊2日(午前入院していだき、午後治療を行い、翌日退院となります)で退院となります。

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