甲状腺

甲状腺は代謝をつかさどるホルモン(T4, T3)を分泌する臓器で、脳下垂体から分泌されるTSHが甲状腺に作用し、甲状腺ホルモンの分泌量をコントロールしています。

甲状腺の疾患には、大きく(1)びまん性疾患(2)結節性疾患に分けられ、おおよそ前者はホルモンの高低が、後者は結節の良悪性が問題になります。

甲状腺

(1)びまん性疾患

橋本病(慢性甲状腺炎)

びまん性疾患の代表が橋本病(慢性甲状腺炎)です。
50歳以上の女性の約2割が罹患しているともいわれており、よくある疾患の1つです。
自己免疫性疾患であり、自己抗体(抗サイログロブリン抗体、抗TPO抗体)が陽性になります。甲状腺腫大をきっかけに診断されることが多いですが、ほとんどのケースで甲状腺機能は正常に維持されるため、治療は必要ありません。
ごく一部の方が甲状腺機能低下症に至り、重度の場合には全身倦怠感、寒がり、便秘、体重増加、むくみ、皮膚乾燥、徐脈などの自覚症状、高コレステロール血症や高CPK血症を伴います。
最近は、簡便に甲状腺ホルモンをチェックできるため、偶発的に甲状腺機能低下症が発見されることが多くなっています。

治療として、甲状腺ホルモン補充をおこないます。ほとんどの方が外来で診断・治療開始になります。

バセドウ病

橋本病と並んでよくある疾患で、自己免疫性疾患のひとつです。
バセドウ病は自己抗体(抗TSH受容体抗体)によって、下垂体からの命令ホルモン(TSH)がなくても自律的に甲状腺ホルモンが合成されてしまい、甲状腺機能低下症の逆である甲状腺機能亢進症となりますが、背景に同じ甲状腺自己免疫疾患である橋本病も合併していることがしばしばあります。

動悸、息切れ、食欲亢進、体重減少、微熱などの自覚症状の他、低コレステロール血症、高ALP血症、頻脈などを契機に診断に至ります。ご高齢の方では、食欲低下、体重減少、心房細動など非特異的な症状が前面にでるため、診断が遅れてしまうことがしばしばあります。

治療として、抗甲状腺薬、アイソトープ、外科手術がありますが、日本では抗甲状腺薬による治療を選ばれる方が圧倒的に多いです。この場合、治療は長期に渡ることになります。一方、アイソトープ治療や外科手術の場合には甲状腺機能低下症に至ることがあります。
ほとんどの方が外来で診断・治療開始になりますが、抗甲状腺薬の副作用(無顆粒球症、肝機能障害など)や甲状腺クリーゼを呈した場合、アイソトープ治療の場合には入院加療が必要となります。

無痛性甲状腺炎

背景に橋本病を有する患者さんに生じ、産後におきると産後甲状腺炎といわれます。
メカニズムは不明ですが、甲状腺濾胞細胞が一過性に破壊され、甲状腺ホルモンが逸脱することによって血液中の甲状腺ホルモンが高値になります。バセドウ病の場合は甲状腺ホルモン合成が高まるのであって、病気のメカニズムは全く異なるのですが、臨床症状は同一であるため、ときに鑑別が困難なことがあります。3ヶ月以内に破壊は自然におさまりますが、ひどい場合には甲状腺機能低下に移行することがあります。

結節性疾患

以前は甲状腺が腫れていることを契機に超音波で診断されることが多かったですが、最近は肺CTや検診で超音波がなされることが多く、甲状腺偶発腫としてみつかってくることが圧倒的に多くなってきています。そのほとんどが腺腫様甲状腺結節という良性の結節です。

治療としては、頸部圧迫感や気管狭窄をきたすほどの大きなものでない限り、定期的に(数年に1回)超音波で経過観察のみおこないます。

悪性の結節としては乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、悪性リンパ腫、未分化癌などがありますが、90%以上は乳頭癌であり、超音波ガイド下吸引細胞診をおこなって確定診断します。治療は悪性リンパ腫を除いて外科的治療になり、未分化癌を除けば甲状腺悪性腫瘍は比較的治癒しやすい疾患です。ほとんどの方が外来で経過観察あるいは外科的治療になります。