視床下部・下垂体

視床下部・下垂体は、種々のホルモンの分泌をコントロールする司令塔に相当し、身体の恒常性を維持するのになくてはならない器官(臓器)です。
具体的には下垂体の前葉からは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、成長ホルモン(GH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、乳汁分泌ホルモン(prolactin: PRL)、性腺刺激ホルモン(LH, FSH)が、下垂体の後葉からは抗利尿ホルモン(ADH)が分泌されます。
視床下部から分泌されるホルモンによって下垂体前葉ホルモンの分泌がコントロールされているのですが、ACTHは副腎を刺激してコルチゾールを、TSHは甲状腺を刺激して甲状腺ホルモン(T3, T4)を、GHは肝臓でIGF-I産生を、LHは男性では精巣を刺激してテストステロンを、LH, FSHは女性では卵巣を刺激してエストロジェンを、末梢ホルモンとして産生します。視床下部・下垂体の病気は、(1)ホルモンが高くなる病気(2)ホルモンが低くなる病気に分けられます。

視床下部 下垂体

ホルモンが高くなる病気

下垂体で産生される6種類の命令ホルモンを産生する細胞が腫瘍性に増殖し、ホルモンの自律分泌をおこすようになると、各末梢ホルモン過剰症を伴う病気にいたります。
腫瘍がACTHを自律的に産生する場合クッシング病、GHの場合先端巨大症、PRLの場合プロラクチン産生腫瘍、TSHの場合中枢性甲状腺機能亢進症、まれですがLH, FSHの場合ゴナドトロピン産生腫瘍となります。

1.クッシング病

クッシング症候群とは、副腎からコルチゾールが自律的に過剰分泌されることによって生じる病気で、下垂体のACTH産生腺腫が原因となるものをとくにクッシング病といいます。その他クッシング症候群には、副腎性クッシング症候群、異所性ACTH産生腫瘍があります。
コルチゾールは生命維持に必要不可欠なホルモンですが、不必要に過剰に分泌されると中心性肥満、満月様顔貌、下肢浮腫、易出血性、二次性高血圧、耐糖能障害・糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症をひきおこします。経蝶形骨洞的下垂体腺腫摘出術により腫瘍を摘除できれば完治します。

2.先端巨大症

GH産生下垂体腺腫からGHが自律的に過剰分泌されることによって生じる病気で、顔貌の変化(眉弓部の膨隆、鼻・口唇肥大、下顎突出など)、手足の容積の増大、巨大舌などの特徴的な変化をきたします。骨端線が閉じる前に発症すると下垂体性巨人症となります。

合併症として二次性高血圧、糖尿病、脂質異常症、心肥大、睡眠時無呼吸症候群、大腸がんをひきおこします。

経蝶形骨洞的下垂体腺腫摘出術により腫瘍を摘除できれば完治しますが、薬物療法としてソマトスタチンアナログなども用いられます。

3.プロラクチン産生下垂体腺腫

プロラクチン産生下垂体腺腫からプロラクチンが自律的に過剰分泌されることによって生じる病気で、女性の場合月経不順・無月経、乳汁分泌を、男性の場合性欲低下をもたらします。

治療として、ドーパミン受容体作動薬が著効し、微小腺腫の場合消失することもあります。

4.中枢性甲状腺機能亢進症

TSH産生下垂体腺腫からTSHが自律的に分泌され、甲状腺ホルモンが過剰に産生される病気です。
バセドウ病(以下参照)と同様の臨床症状を呈します。経蝶形骨洞的下垂体腺腫摘出術により腫瘍を摘除できれば完治します。

ホルモンが低くなる病気

視床下部・下垂体からのホルモン分泌不全により下垂体機能低下症、中枢性尿崩症をきたします。

原因として、腫瘍(機能性・非機能性腺腫、胚腫、頭蓋咽頭腫、悪性リンパ腫、他の悪性腫瘍の浸潤、転移)、嚢胞(ラトケ嚢胞、くも膜嚢胞)、炎症性疾患(リンパ球性下垂体炎、IgG4関連下垂体炎)、分娩時の大量出血(シーハン症候群)、肉芽腫性疾患(サルコイドーシスなど)などがあげられます。
原疾患の治療は他科との連携でおこなうこともありますが、原疾患に伴う下垂体機能低下症、中枢性尿崩症につき、負荷試験や画像診断により診断し、欠落ホルモンを適切に補充する治療をおこなっています。