非典型溶血性尿毒症症​候群

非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診断のための検査

東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科では、非常にまれな疾患である非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診断のための検査と全国調査を行っています。

溶血性尿毒症症候群(HUS)は、溶血性貧血、血小板減少、腎障害を3徴候とし、多くはO-157等の病原性大腸菌に感染し、下痢を伴って発症するのを特徴とします。これに対して非典型溶血性尿毒症症候群は病原性大腸菌の感染が認められないにもかかわらず、溶血性尿毒症症候群の症状を呈する疾患を指します。原因としては、先天性の補体関連遺伝子異常の他に、後天性のaHUSとして抗H因子抗体が陽性になり発症する例が知られています。

非典型溶血性尿毒症症候群の診断のためには、患者血液を用いた特殊補体系検査、血中抗H因子抗体の有無、遺伝子検査、など様々な検査が必要であり、これらの検査は研究レベルでしか実施されておらず、保険診療では実施できない検査になります。

1.対象

当科では、2016年に日本腎臓学会、日本小児科学会から公表されました「非典型溶血性尿毒症症候群診療ガイド」における臨床的に非典型溶血性尿毒症症候群が疑われる患者さんを検査の対象としています。
「非典型溶血性尿毒症症候群診療ガイド」における臨床的な非典型溶血性尿毒症症候群とは、下記の三徴候を認める血栓性微小血管症(TMA)のうち、志賀毒素を産生する病原性大腸菌によるHUS(STEC-HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、二次性TMA(代謝異常症、感染症、薬剤性、自己免疫性疾患、悪性腫瘍、HELLP症候群、移植後などによるTMA)を除いたものを臨床的aHUSとしています。必ずしも三徴候を認めないこともあります。
  

  1. 微小血管症性溶血性貧血;ヘモグロビン(Hb) 10g/dl未満。
    血中 Hb値のみで判断するのではなく、血清LDHの上昇、血清ハプトグロビンの著減、末梢血塗沫標本での破砕赤血球の存在をもとに微小血管症性溶血の有無を確認する。なお、破砕赤血球を検出しない場合もある。
  2. 血小板減少;血小板(platelets、PLT) 15万/μl未満。
  3. 急性腎障害(acute kidney injury、AKI);小児例では年齢・性別による血清クレアチニン基準値の 1.5倍以上(血清クレアチニンは、日本小児腎臓病学会の基準値を用いる)。成人例ではAKIの診断基準を用いる。

  

「非典型溶血性尿毒症症候群診療ガイド」に記載されているように、自己免疫疾患・膠原病、造血幹細胞移植後、腎移植後などの二次性TMAでも、補体関連遺伝子異常が認められるとする報告や、抗H因子抗体が陽性である例が報告されています。二次性TMAの中で、先天性や後天性の補体系の活性化異常がどの程度関与しているのか、またどの程度の患者さんが遺伝子異常により発症しているかは不明であり、補体系検査・遺伝子検査をお引き受けできるかどうかは、個別に検討させていただいております。

2.方法

各病院で非典型溶血性尿毒症症候群が疑われる患者さんがいらした場合には、後日診断ができるように血漿治療や生物製剤などの治療前の検体保存をしておくことが重要になります。
クエン酸血漿(凝固採血管)とEDTA2K血漿(血算採血管)を用いて、各々2ml ×4本分を採取して頂き(乳児や小児で採血が困難な場合には適宜減量してください)、遠心分離後(2000rpm, 15min, 4℃)に上清の血漿を密封型のスピッツ(4本)に移していただき、マイナス80度で凍結して下さい。中間層の白血球成分と下層の血球成分(4本)は遺伝子解析に用いますので、上清を取り除いた状態で中間層と下層をそのまま凍結保存しておいてください。

まずはメールで下記の当科の非典型溶血性尿毒症症候群事務局に、病歴、検査所見などと合わせてお問い合わせください。
その後の検査までの方法ですが
  

  1. ご相談いただきました病院から血液サンプル、DNAサンプルを郵送いただく場合には、本検査に対する各病院での倫理委員会の承認、同意書作成・取得、が必要になります。必要な書類は、ご連絡させていただきます。
  2. ご相談いただきました病院で倫理委員会の開催が困難な場合や、倫理委員会が無い病院の場合には、東大医学部の倫理委員会での代理審査が可能です。
  3. 患者さんが東大病院を受診することが可能な場合には、当院当科を受診いただけましたら、外来で検査の説明をさせていただき、採血させていただきます。外来受診方法、受診日はご依頼をいただいてからご連絡させていただきます。この場合にはご依頼元の病院での倫理委員会の承認は必要ありません。

 
補体系検査、遺伝子検査は、両親、兄弟姉妹と一緒に解析することで精度が向上しますので、可能な限りご家族のサンプルもお願いしています。
治療・加療に関しては紹介元の病院で行って頂くことを原則としております。

東京大学医学部附属病院、および国立循環器病研究センター研究所において補体系検査、遺伝子解析を実施します。ただし、血液検査で異常の出ないタイプや、まだ原因となる遺伝子の分かっていない患者さんもおり、遺伝子検査でも異常が見つからない患者さんもいらっしゃいます。

また本疾患の本邦での遺伝子異常の頻度、治療効果、予後については明らかになっていないため、検査をされた患者さんの長期的な臨床経過の報告をお願いしています。

連絡先

東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科
非典型溶血性尿毒症症候群事務局
E-mail:ahus-office@umin.ac.jp
 

奈良県立医科大学輸血部で非典型溶血性尿毒症症候群と診断された患者さんへ

これまで奈良県立医科大学輸血部では、血栓性微小血管障害症という非典型溶血性尿毒症症候群を含んだ大きな疾患の研究を行っておりましたが、その中の疾患の一部である非典型溶血性尿毒症症候群を当科で引き継いで研究することになりました。

それに伴い、これまでに非典型溶血性尿毒症症候群が疑われ、奈良県立医科大学輸血部で診断され、登録された患者さんの臨床経過、血液サンプル、遺伝子サンプル、検査結果などを、当科に移行することとなりました。

奈良県立医科大学輸血部で参加された患者さんで、上記の移行にご承諾いただけない患者さんは、お手数ですが上記までご連絡ください。血栓性血小板減少性紫斑病の患者さんにつきましては、これまで通り奈良県立医科大学で研究を続けていく予定です。